X線結晶構造解析や核磁気共鳴(NMR)などの構造解析手法の発展により、多くの生体高分子(蛋白質、核酸、その複合体)の立体構造情報が原子レベルの解像度で得られています。しかし、これらの分子の機能を理解し、医学・薬学に貢献していくためには、その立体構造ダイナミクスを理解することが必要です。蛋白質などの構造ダイナミクスは、分子振動などの速い運動(10-15秒)から分子全体の大規模な構造変化のような遅い分子運動(10-3秒以上)を含む複雑な運動です。このため、従来の実験的手法を用いた解析だけでは不十分でした。
このプロジェクトでは、X線結晶構造解析や核磁気共鳴などの伝統的な構造生物学の手法に加えて、X線自由電子レーザーや低温電子顕微鏡など最新の技術を利用するとともに、高感度の核磁気共鳴法など新しい実験手法の開発に取り組みます。さらに、シミュレーションやバイオインフォマティクスなどの計算科学の手法を組み合わせることで様々な生体高分子の構造ダイナミクスの詳細な解析を実現し、生体高分子の立体構造ダイナミクスと分子機能の関係を解明します。構造生物学の専門家だけでなく、物理学や化学、計算科学など異なるバックグラウンドを持つ研究者が連携することにより、新しい視点での研究を行っていきたいと思います。